気づけば、キャラの名前を叫びたくなるくらい、応援していました。
イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード(イナイレV)をクリアした感想です。
シリーズ完全未経験の状態で始めましたが、
気づけば、仲間たち一人ひとりのことが気になっていました。
イベントで誰かが壁にぶつかり、
それを越えて覚醒する場面では、
胸の奥がじんわり熱くなります。
一から部員を集めていく過程で、
チームメイトの弱さや迷いまで含めて知っていける。
その積み重ねが、そのまま感情移入につながっていくんです。
結論。
このゲームのストーリーは、「逆転の快感」にかなり振り切っています。
弱い立場から始まり、
内面の葛藤を力に変えて前に出る。
そういう“鳥肌が立つ瞬間”を、何度も用意してくる構成です。
なぜここまで心を動かされたのか。
イナズマイレブンVがどんなゲームなのかを交えながら、
良かった点も、正直きつかった点も整理します。
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イナイレVで得られる「逆転の快感」の正体

イナイレVが呼び起こす心の熱さは、瞬間的な盛り上がりではありません。
キャラクターの弱さを知り、感情を共有した先に訪れる逆転だからこそ、強く刺さります。
この仕組みが、なぜ大人にも響くのか。
3つの要素に分けて見ていきます。
仲間を好きにさせる「丁寧な背景描写」の積み上げ
相手のことをちゃんと知る。
作品のキャラクターに思い入れを持つのに、最も大切なことです。
イナイレVは、その前提をかなりしっかりと描いています。
- 「一からの出会い」を演出する、「新たな主人公」という設定。
⇒メインキャラや所属校は、過去作との強い繋がりがありません。
シリーズ未経験でも置いていかれずにストーリーに入れます。
主人公と同じ目線で仲間と出会い、少しずつ関係ができていく。
「初めまして」から始まる分、思い入れが自然に積み上がっていきます。
- 部員のそれぞれの「人となり」や「抱える問題」を共有するストーリー。
⇒キャラの背景が浅いまま、試合が始まることはありません。
「この子はこういう人だから」をきちんと知ってからストーリーが動きます。
弱さを知っているからこそ、「頑張って!」という心の声が生まれるんですよね。
大人の心を動かす「人間ドラマ」の最大化
いきなり追い込まれて、勢いで逆転。
それだけでは、正直あまり心は動きません。
イナイレVが描いているのは、
仲間たちが「自分の弱さ」を自覚し、逃げずに向き合う過程。
だからこそ、その先にある逆転がちゃんと刺さってきます。
- 立ちはだかる壁が、外の強敵よりも
「過去の失敗」や「自信のなさ」みたいな、内面にあること。
⇒強い敵を倒すだけの単純なストーリーでは終わらない。
自分との戦いによって、大人も共感できる物語の重みが生まれます。
- 覚醒イベントが、そのまま「試合の勝ち負け」に直結する構造。
⇒スポーツと人間ドラマが、しっかりと噛み合っています。
弱さを抱えた仲間が、チームメイトに支えられて覚醒し、その一手が試合をひっくり返す。
派手な必殺技の応酬より、こっちのほうが、正直グッと来ました。
泥臭さをそぎ落とした「今どきのスポ根」
泥臭い根性論にも、物語としての熱さはあります。
ただイナイレVは、そこからしんどさや理不尽さを切り離して、
スポ根の「熱いところだけ」を得られる形にしています。
- いわゆる「しごき」や、理不尽さを感じる練習描写が出てこないところ。
⇒ 特訓で疲れた、という会話はありますが、見ていてつらくなるようなシーンはありません。
全体的に今どきのトレーニング風景で、感覚がかなり現代寄りです。
理不尽な根性論が苦手だった人でも、抵抗なく見られます。
- 強大な相手にも、「分析」と「采配」で立ち向かっていくところ。
⇒ もちろん特訓はしますが、
気合や根性だけでどうにかする話ではありません。
新設チームでも戦える理由が、ちゃんと描かれています。
主人公の采配がハマった瞬間の、「いける…!」ってなる感じを
チームメイトと共有する瞬間が気持ちいいです。
プレイしてて思わず「〇〇(キャラ名)ーーーー!」って叫びたくなるくらい熱いです、実際。
大人になってもこんなにキャラが好きになれるゲーム、中々ないです。
プレイ前に知っておくべき2つの「致命的欠点」

この作品は、人間ドラマの完成度はかなり高いです。
ただし、良いところだけで語れる作品でもありません。
プレイ前に知っておかないと、評価が一気に変わる点が2つあります。
サッカーが始まらない。序盤3時間のじゃんけん地獄
イナイレVの最大の問題点。
それは中々サッカーが出来ないことと、「後出しじゃんけんバトル」を強制されることです。
- 初サッカーまで3時間以上。流石に長すぎる序盤の導入シーン。
⇒正直、このテンポの悪さは擁護できません。先生、サッカーがしたいです。
ただ、丁寧に導入が描かれた分だけ、
自分の手でサッカー部を立ち上げた実感が得られた、とも言えます。
- サッカーゲームなのに、なぜじゃんけん?
⇒序盤のストーリーでは、
後出しで勝てるじゃんけんポーズをひたすら押すだけの謎バトルが頻発します。
単調な作業に近く、
サッカーするゲームで、なぜじゃんけんをしているのか、
という本質的な問いさえ生まれるでしょう。
唯一の救いは、これが序盤だけで終わること。
ストーリーを追いたい気持ちがなかったら、ここで離脱していたと思います。
時間の浪費要素が多い、クロニクルモードの問題点
クロニクルモードそのものは、フルボイスで過去作を再現したバトルを楽しめる等、手放しで面白いコンテンツです。
しかし、2戦しないと先に進めない、0.01%のレアドロップ率など、残念なシステム面が大きく足を引っ張っています。
- ストーリーを進めるのに「同じバトルを2戦」やらされる点
⇒1戦目:過去作の再現バトル/2戦目:ルート解放バトルで、同じ相手と2戦やらないと先のストーリーが見れません。
ルート解放バトルは敵が弱く、レアドロップも無い。
ただ敵を蹂躙するだけの時間の浪費バトルになっています。
この2戦目の存在が、せっかくのクロニクルモードの楽しさを大きく損ねています。
- HEROキャラのドロップ率は0.01%。狙ったキャラの入手には150時間以上掛かる計算。
⇒この現実的でない設定により、普通のプレイヤーはHEROキャラの入手を諦めることになるでしょう。
ただし、これはあくまでやり込み向けの要素で、クロニクルモードのメインである原作再現ストーリーには影響しません。
他にも使いにくい装備・ショップのUIやファストトラベルなど、細かい問題点はあります。
同時に、それらの欠点を凌駕するポテンシャルをこのゲームは持っています。
詳しくは次章で解説します。
致命的な欠点を超えて、最後まで遊んでしまう理由

正直、ここまで触れてきた欠点はどれも重いです。特に序盤のじゃんけんは、多くの人が疑問に思うポイントです。
それでも最後まで遊んでしまう。
この作品の核である「逆転のカタルシス」にはプレイヤーを掴んで離さない爆発力があります。
部員集めの3時間があるから、ちゃんと感情移入できる
この作品で、部員一人ひとりが印象に残る理由ははっきりしています。
チームが形になるまでに、「部員集めの3時間」が用意されているからです。
その間に、部員それぞれの事情や弱さに触れていきます。
一方的に説明されるのではなく、少しずつ距離が縮まっていく感覚があります。
この積み重ねがあるからこそ、後に訪れる「弱さを乗り越える瞬間」が、強く刺さります。
欠点で挙げた冗長な3時間は、(じゃんけん以外は)無駄ではないということです。
必殺技よりも、心が動く「覚醒シーン」
この作品の試合には、派手な必殺技よりも、心に刺さるポイントがあります。
それは、部員たちが己の弱さを受け入れ、乗り越える瞬間です。
仲間を信じる覚悟、逃げない決断。
その一つひとつがフルボイスのアニメで丁寧に積み重なっていくので、勝敗以上に、部員たちの「覚醒する瞬間」の姿が、強く印象に残ります。
試合前の準備期間が、気持ちを一気に高めてくれる
この作品は、試合が始まる前の準備期間をとても大切にしています。
いきなりキックオフはしません。
対戦校を分析し、特訓を重ね、「なぜこのチームが互角に戦えるのか」をプレイヤー自身が納得してから、試合が始まります。
だから、試合中の覚醒シーンがご都合主義で終わらない。
イナイレVに大人すら熱くなる理由は、すでに試合前に積み上げられています。
シリーズ未経験でも問題なし。事前に気になるポイントのまとめ

先に言っておくと、シリーズ未経験でも問題ありません。
その上で、事前に気になるポイントをまとめておきます。
- クリア時間どれくらい?
メインストーリーは20時間~30時間ほど。
クロニクルモードまで踏破するなら+10時間は遊べます。
- サッカーゲーム苦手でも大丈夫?
半分アクション、半分コマンド式RPGのようなシステムです。
操作精度より判断力が重要なので、サッカーゲームが苦手でも問題ありません。
ストーリー目当てでも十分楽しめます
- アニメとか過去作知らないと感動半減する?
実際私は『円堂守って誰?』ってレベルでしたが、問題なくハマれました。
今までの世界から25年後なので、同じスタートラインで遊べます。
- 子供向け過ぎない?
今作は派手さよりも、「逆転のカタルシス」で熱くさせる大人向けのストーリーです。
キャラの頭身もリアル寄りになっており、「イナイレ=小学生向け」という先入観を良い意味でぶち壊してくれました。
- キャラメイクはあるの?
自分のアバターを作れます。性別、顔、体形、ボイスなど。
扱いとしては、いつでもカスタマイズを直せる汎用キャラという感じです。
- セレクトキャラの声は気になる?
私は気になりませんでしたが、そういう意見があるのは事実です。
ただ、ストーリーに深く関わらないちょい役みたいな感じなので、気にする必要はないです。
スタメンから外すことも出来ます。
- 主人公は固定?
笹波雲明君で固定です。
MAP上の操作キャラは、同行している他キャラクターに変えることも出来ます。
イナイレVの王道ストーリーは、今でも胸を熱くさせる

正直、序盤のテンポや一部の設計には、「今の時代だとキツいな」と感じるところもありました。
それでも最後まで遊んで、イナズマイレブンVを「忘れられない一本」だと思えた理由ははっきりしています。
このゲームは、最後まで一貫してキャラクターの弱さと向き合い、その成長を描き切っていたからです。
派手な必殺技や勝利そのものより、立ち上がる覚悟や、仲間を信じる瞬間が心に残る。
スポ根のいちばん大事なところを、今の感性でちゃんと届けてくれました。
王道は、使い古されたものじゃない。
丁寧に描けば、今でもこんなに熱くなれる。
イナズマイレブンVは、そう思わせてくれます。

